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リッカルド・ムーティー指揮、スカラ座公演、モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》

10月5日(水)

新学期がはじまると、授業の準備や諸々の雑用におわれて、ゆっくり音楽を聴くこともできない。この間の日曜、ひさしぶりに、 DVD で、オペラを鑑賞した。

モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》は、かつて、いちばん好きなオペラだった。神をおそれず、おのれの意思のみをたよりに生きる近代人ドン・ジョヴァンニ、裏切られながらも、あくまで献身的なドンナ・エルヴィーラ、かわいらしさのうちに上昇志向を秘めたツェルリーナ、そして、主人に愛想を尽かしているのに、主人と決別することのできないレポレロ、といった登場人物の織りなす物語は、単純ではあるけれど、さまざまな解釈が可能で飽きないし、いうまでもなく、モーツァルトの音楽は、なにものにも代えがたい。

今回も、ミュンヘンの「ルートヴィヒ・ベック」で買った DVD で、1987年12月15日に、ミラノのスカラ座でおこなわれた公演を収録したもの。指揮は、リッカルド・ムーティー(帰国直前に、《ドン・ジョヴァンニ》の DVD をふたつ買った。もうひとつは、以前 Martin さんが紹介されていた、ムーティーがウィーンで指揮した公演)。

配役は、
Don Giovanni ・・・・・ Th. Allen
Il Commendatore ・・・・・ S. Koptchhak
Donna Anna ・・・・・ E. Gruberova
Don Ottavio ・・・・・ F. Araiza
Donna Elvira ・・・・・ Ann Murray
Leporello ・・・・・ C. Desderi
Masetto ・・・・・ N. De Carolis
Zerlina ・・・・・ S. Mentzer
で、演出は、G. Strehler 。

この公演、演出がいい。一言でいえば、華麗。日本人がオペラと聞いておもいうかべるであろう舞台が、くりひろげられていく。宮殿やギリシア神殿をおもわせる建物、真っ赤なカーテン、鏡のように磨きあげられた床(バイエルン国立歌劇場の《アリオダンテ》をおもいだした・・・「オペラ」の項目の写真を参照)など、古臭くもなく、過度にモダンでもなく、ツボを心得ている。演出が音楽の邪魔をするということがない。文句というか、残念だったのは、騎士長の石像が動かないことくらいかな。動かないほうが品はあるのだが、私は、動く石像が見たいし、ドン・ジョヴァンニには、ダイナミックに地獄にいってほしいのだ(笑)。

音楽も見事。スカラ座管弦楽団は、中身のつまった響きだし、ムーティーの指揮は、てきぱきしている。歌手陣も文句なし(やはり、バイエルンやウィーンとけっこうダブってますね)。ひとつだけ難をいえば、騎士長の声かな。すこしだけ重みにかけるというか、若々しい生気を感じた。

この公演でいちばんうれしいのは、ツェルリーナがかわいいこと(爆)。本質的な問題ではないが、映像を観る場合は、やはり、役柄に合ったチャーミングさも必要かなとおもったりする。第一幕、ドン・ジョヴァンニとの二重唱は、一幅の絵のようだった。

《ドン・ジョヴァンニ》にかんしては、長らく、フルトヴェングラーの演奏に親しんできた私。あの公演が好きで、ザルツブルク音楽祭のときに、わざわざ、会場となったフェルゼンライトシューレでおこなわれた演奏会にいったりしたくらいだが、アリアによっては、やはり、鈍重と感じるものがある。そうした不満を補うものとして、この DVD はありがたい。
by kalos1974 | 2005-10-05 22:44 | CD・DVD
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