カント Immanuel Kant (1724-1804) は、美しいものを見極める能力について考えている。『判断力批判』(1790)から引用する(B16, Philosophische Bibliothek 507, S. 58)。
„Geschmack ist das Beurteilungsvermoegen eines Gegenstandes oder einer Vorstellungsart durch ein Wohlgefallen oder Missfallen ohne alles Interesse. Der Gegenstand eines solchen Wohlgefallens heisst schoen“(„Kritik der Urteilskraft", B16) カントがここでいっているのは、 1.趣味は、ある対象、もしくはイメージ(表象)の仕方を判定する能力だということ。 2.判定は、心地よさ(適意 Wohlgefallen)をつうじておこなわれるということ。 3.この判定は、一切の関心(所有欲、Interesse )を欠いているということ。 3.心地よさを喚起する対象は美しいといわれるということ。 の4点。 とりあえず重要なのは、カントが、「私の趣味によって、あるものは美しいといわれたり、別のものは醜いといわれたりする」と考え、美しいものを判定する能力を、趣味と名づけたこと。 趣味と訳される „Geschmack“は、フランス語だと „gout“ 、英語だと „taste“ 。つまり、もともと、「味覚」のこと。われわれは、なにかを口にいれて、おいしいか、まずいか、判定する。そうした直接的な判定が、あるものを美しいと感じるときにも働いている。そう、カントは考えたわけだ。 では、味覚とはどんな感覚なのだろう。もちろん、ものの味を判定する感覚。だが、味を判定するためには、舌のうえになにかがのっていなければならない。味覚が働くまえに、口のなかに食べ物があることを、直接的に感知する能力が必要である。そうした能力とは、触覚にほかならないのではないか。 (つづく)
by kalos1974
| 2005-07-04 21:23
| すこしまじめな考察
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