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得がたい経験

6月18日(土)
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演奏:ヘルベルト・ブロムシュテット指揮、ライプツッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
曲目:ブルックナー《交響曲第8番》

いままでなんどか、ただただ幸せな演奏会というものを経験した。知らない間に惹きこまれ、気がついたら、コンサートがおわっている、「もう一度はじめから聴きたい」と思わせる演奏会。当夜のコンサートも、間違いなく、そのなかのひとつに入る。

ブロムシュテットは、とてもやさしい人だと思う。音楽だけでなく、おそらく、さまざまなものを慈しんでいる人。ゲヴァントハウス管弦楽団もまた、とても善良な人たちの集まりじゃないかな。勤勉で、一徹、ユーモアもあって、毎日を真面目に生きている人たち。この夜の演奏を聴きながら、そんなふうに感じた。もちろん、見事なブルックナーを聴かせてくれたのだけれども、音楽を超えて、なにか、絶対的な価値が、直接的に開示された演奏だった。言葉にすると、とても大げさになってしまうが、誠実に生きることの尊さとか、そもそも、この世界が存在していることの「有り難さ」のようなもの。

ゲヴァントハウス管弦楽団は、こんなによいオーケストラだったろうか? 以前聴いたときと、ずいぶん印象がちがう。
「ドイツ的なオーケストラ」という常套句がある。たぶん、低弦がしっかりしていて、なんとも木質な響きをもった楽団のことをいうのだろう。だとしたら、ゲヴァントハウス管弦楽団こそ、まさにそれ。ごく自然に、「ドイツ的なオーケストラ」そのもの。なんの力みもない。響きがとても充実していて、まろやか。やわらかくて、ふくらみがある。あえて難をいえば、木管がいまひとつ精彩に欠けたかもしれないが、充分許容範囲というか、ああいう愛に充ちた演奏(恥ずかしい表現だが、ほかにいいようがない)のまえでは、技術がどうとか、そういった話は、軽薄でしかない。
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演奏終了後、ブラボーの声とともに、ものすごい拍手。ホールが揺れた。指揮者がさがっても、みな一心に手をたたいている。ブロムシュテットは、オケに、立つよう促すが、楽団員たちは、ブロムシュテットに向かって拍手をしている。拍手に値するのは、あなただといわんばかり。そして、ブロムシュテットは、楽団員に深々と頭をさげる。聴衆、オーケストラ、指揮者のそれぞれが、お互いに感謝しあっている。この光景を見られただけでも、チューリヒにきた甲斐があった。
by kalos1974 | 2005-06-18 22:24 | 演奏会
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