10月24日(月)
さがしものをしていたら、なにもラベルの貼られていないカセット・テープが出てきた。さっそく聴いてみると、シューベルトのミサ曲《Es-Dur》だった。演奏者はわからないけど、響きはやわらかいのに、とても力強くて、劇的。きっと、名のある団体にちがいない。 私、音楽はもっぱら聴くだけ。楽器は子どものころに挫折したし、歌は音痴を自認している。なのに、以前、二度ばかり、合唱に参加したことがある。 素人の合唱団は、大人数のところでも、男声は、数えるほどしかいない。ミサ曲なんかをやる場合、女声ばかりだと、見た目からして、あまりにもバランスがわるい。そこで、「多少音がはずれてもいいから」といわれて、なかば強制的に、助っ人? をたのまれた。そのとき歌ったのが、この《Es-Dur》。テープは、たしか、「『ほんとうは』こういう曲なんだよ」といわれてわたされたもの。 この作品は、シューベルトの最高傑作のひとつではないだろうか。書かれたのは、1828年。亡くなる年の作品だからそう感じるのかもしれないが、底なしの湖をのぞきこむような怖さと厳粛さに身がひきしまる。はじめて聴いたとき、「なんとおそろしい音楽があるんだろう」とおもった。「ヨーロッパ人って、こんなにも孤独なのだろうか、こんなにも厳しく神と対面するのだろうか」と。 全体的に重くて、多少くどいかもしれない。ポリフォニックな響き、各パートの重層的な構造のためか、峻厳な感じをうける。しかし、たとえば「グローリア」には壮麗さとともに穏やかさがある。"Gratias agimus tibi propter magnam gloriam tuam" の部分、旋律は切ないのだが、どこか陽だまりにいるような暖かさ。また、「クレド」では、シューベルト一流の歌を聴くことができる。チェロの奏でる旋律は、甘く穏やか、敬虔にして高貴。なんという安らぎに満ちた音楽だろう。そして、チェロをなぞるように、テノールが歌う。"Et incarnatus est de Spiritu Sancto ex Maria Virgine ・・・" テノールがもうひとり、そしてソプラノがくわわった三重唱。さらに合唱。 「紅茶にひたしたマドレーヌ」ではないけれど、当時の記憶が鮮明によみがえった。 自分がかつて歌った? 曲なのに、なぜか CD を一枚ももっていなかった。そこで、 Amazon をのぞいたら、ジュリーニがバイエルン放送交響楽団を指揮したものがあったので、注文したところ。《ミサ曲第6番》というらしい。とどくのが楽しみだ。
by kalos1974
| 2005-10-25 10:14
| 日記
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